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月刊コラム

2013年2月 火器管制レーダー照射事件の背景

 尖閣諸島をめぐって中国との関係が悪化していますが、1月末には東シナ海で、海上自衛隊の護衛艦が中国海軍の軍艦から火器管制レーダーを照射されるという事件が起きました。その前には海自ヘリコプターが照射を受けています。火器管制レーダーの照射、ロックオンはミサイルなどによる攻撃の直前に行われるもので、一歩誤れば偶発的な戦闘さえ起きかねない、信じがたい行為でした。

 艦船や戦闘機に装備されている火器管制レーダーは指向性が高いレーダーで、発射されたミサイルは目標物に反射して帰ってきたレーダー波に誘導されて飛んでいきます。ロックオンされた艦船や戦闘機では、それを知らせる警報が鳴り響きます。今回も護衛艦のロックオン警報が鳴り、その後の分析の結果、火器管制レーダーに照射されたことが分かったといいます。もっとも、その後の調べで分かったというのはカモフラージュで、即座に判定できたはずだという見方もあります。

 ミサイルなどを誘導する火器管制レーダーの照射は当然、攻撃を前提とした行為であり、拳銃で言えば相手に銃口を向け、引き金に指をかける行為に等しいといっても過言ではありません。アメリカの軍艦などは、ロックオンを攻撃と同じと受け取り、すぐさま反撃を開始する場合もあるとのことです。

 では、このような危険な行為をなぜ、中国艦船は行ったのでしょうか。追尾してくる海自護衛艦をうるさがり、脅しの意味で火器管制レーダーを照射したのではないかという憶測もされています。実際、東西冷戦時代にはソ連艦船が脅しのレーダー照射をしたり、砲門を向けるという行為がしばしばあったということです。

 週刊誌の報道によりますと、過去に哨戒機P-3Cが東シナ海で、中国艦船からと見られる火器管制レーダーの照射を受け、レーダーを錯乱させる金属片のチャフを機外に放出しながら、レーダー波から逃れたことがあったそうです。以前から中国艦船のロックオン行為が常習化していたということならば、艦船の船長か士官の独自の判断で行われた脅しであったという可能性が高まります。それならば、問題は中国海軍内部の規律、統率の悪さということになります。

 重要なのは、「尖閣諸島問題で武力衝突も辞さないという中国側の強硬なメッセージだ」という見方です。今回のロックオン行為にそういう意図が込められているならば、日本はこの事実をしっかりと分析し、対応していかなければなりません。

 日本側の抗議に、中国当局者は「捏造だ」として、その事実を否定しています。政府は証拠となるレーダー分析情報の開示を検討していましたが、核実験を強行した北朝鮮制裁のカギを握る中国を、これ以上刺激したくないと、開示を当分見送る方針だということです。火器管制レーダー波の分析技術は高度な軍事機密です。火器管制レーダー波を高精度に分析されていることが分かれば、相手側はより探知されにくいレーダー機器を開発します。開示見送りは自衛隊の分析技術の露呈を避ける意味合いも背景にあるのでしょう。

 「中国は日本と米国がどう対応するのか試しているのだ」との観測もあります。中国の漁業指導船がたびたび、尖閣諸島の日本領海に侵入するのと同じ意味合いです。それならば、政府はこの挑発に安易に乗ってはいけません。毅然として対応し、日本の正当性を世界に訴えていく必要があります。

 

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