仮想通貨の国内大手取引所「コインチェック」で大規模な盗難が発生し、大きなニュースとなりました。昨年は暗号通貨元年とも呼ばれ、ビットコインをはじめ多くの仮想通貨が生まれては消えました。仮想通貨自体は革新的かつ時流に合致するサービスなので、拡大していくことは確実だと思いますが、「もうかるから」「流行っているから」というだけで、さまざまな情報に飛びつくのは危険です。
仮想通貨とはインターネット上の決済や送金に使われる電子データの一種です。円やドル、ユーロ、人民元などの法定通貨は発行・管理する国家や中央銀行が価値を保証していますが、仮想通貨は利用者の信用によってのみ価値が保証されています。不正防止のために高度な暗号技術を用いていることから「暗号通貨」とも呼ばれ、世界で1千種類を優に超える仮想通貨があるとされています。海外への送金や決済時の手数料が安く済むなどのメリットがある反面、脱税やマネーロンダリングに使われるというデメリットもあります。
企業が資金調達をするため、株式発行の代わりに独自の仮想通貨を発行したり、トルコやベラルーシ、エストニアなどが独自仮想通貨の発行を宣言・上場するなどしたことから流通量が目覚ましい勢いで増え続け、昨年末時点での全体の時価総額は58兆円にも上ったということです。国内では金融庁が登録を認めた交換業者を通じて売買できますが、量販店での買い物や電気料金の支払いなど使える場が増え、今後、ますます拡大していくと見られています。
世界共通の通貨になる可能性があると期待されている仮想通貨ですが、投機の対象としても扱われています。取引価格が急上昇し、全仮想通貨の時価総額の約7割を占める「ビットコイン」などは昨年、1コイン10万円程度から250万円を超すまで急騰し、「2010年に1万円分のビットコインを買っていれば、2億円になっていた」などといった話も流布されて、まさに「仮想通貨バブル」の状況でした。
投機対象になった仮想通貨は危うさも持ち合わせています。過熱ぶりを懸念した中国や韓国が仮想通貨の規制を強化したのをきっかけに一時は1ビットコイン100万円を割り込むまで暴落、米国のニュースサイトは大損したユーザーのために自殺防止ホットラインを設置するなどの騒ぎになりました。
この暴落で一番損をしたのは、最近になって取引を始めた人たちだそうです。「仮想通貨は素人が無防備に参加して勝てるような初心者向けのマーケットとは違う」との警告もされています。これから参画しようとしている人は、周到な準備をし、急騰と暴落を繰り返す荒っぽい相場だということを承知の上で取引を始める必要があります。
取引がインターネットで行われるため、ハッキングによる盗難も発生しています。先月には大手取引所の「コインチェック」から時価約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が盗まれました。同社では顧客に日本円で補償すると表明していますが、その時期さえ不明のままで、顧客らが被害者団体の結成を進めています。4年前にはビットコインの最大手取引所だった「マウント・ゴックス」がサイバー攻撃や元CEOの横領などで大量のビットコインが流出し、営業を停止しました。
まさか、自分のコインが盗まれるなどとは思いたくないでしょうが、取引にあたっては、万々一の盗難の可能性もあるということを頭に入れておいた方がいいようです。