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月刊コラム

2019年1月 野田の女児、救えなかったか

 野田市で父親に冷水シャワーを浴びせられたり、髪の毛を引っ張ったりされるなどの暴行を受けた10歳の女の子が死亡しました。遺体にはそれまでも暴行を受けたとみられる古いあざがあったそうです。日常的に父親に虐待を受け続けた女児の気持ちを思うと痛ましい限りです。どうにかして彼女を救えなかったのでしょうか。

 野田市のアパートに住む41歳の父親は自宅の浴室で女児の頭髪を引っ張って冷水をかけたり、首付近を両手でわしづかみにしたということです。1月24日深夜、「娘が呼吸をしていない」と自ら110番、警察と消防が駆けつけたところ、小学4年生の娘が浴室で倒れて死亡していました。

 近所の人の話によりますと、数年前から女の子の泣き声が毎日のように聞こえたといいます。24日も「ギャー」という女の子の悲鳴と「うるさいと言ってんだろう」という男の怒鳴り声が聞こえたと証言しています。母親の話では、夜間、よく外に立たされてもいたそうです。自分の分身でもある我が子になぜ、そのような残虐な行為ができるのでしょうか。

 この女児は2017年11月、小学校のアンケート調査で「父親からいじめを受けた」と回答、その後の聞き取りで「叩かれるなどの暴力を受けている」と答えたため、県柏児童相談所が女児を一時保護しました。その後、親族宅で生活することを条件に一時保護を解除、翌年3月には自宅に帰ったそうです。

 問題になっているのは一時保護を解除した後の同児相の対応です。同年9月と今年1月に学校を長期欠席していることを知っていたにもかかわらず、担当者が女児の自宅を一回も訪問しなかったことが会見で明らかになりました。親による虐待の疑いで保護した児童がその後、学校を長期欠席していれば、新たな虐待やネグレクトを疑って当然です。同児相の所長は「(長期欠席)を重く捉えるべきだった」と述べましたが、後になって反省しても幼い命は返ってきません。

 学校の対応も悔いが残ります。発育測定などで女児の体を観察したが、特に暴行されたあとなどの報告はなかったと校長は言っていますが、虐待で保護された経緯がある児童にもっと寄り添って、家庭での父親による虐待を聞き出すことができたならば、女児を救う方策も取れたはずと残念です。

 毎日のように女児の悲鳴や父親のものと思われる怒鳴り声を聞いたり、外に立たされているのを見たりした人の児相への通報も恐らくなかったのでしょう。実は、虐待を受けたと思われる児童を見つけた人は、ただちに児相などに通告する義務が法律で定められているのです。虐待を受けたとみられる児童を見かけた人が直ちに通報できるよう、児童相談所の全国共通ダイヤル番号「189」が用意されています。「虐待かと思ったらいち・はや・く(189)」がキャッチフレーズです。

 この番号に毎月、全国で約2万件の入電がありますが、その8割が料金の案内などを知らせる自動音声案内の途中で切られてしまっているそうです。虐待の通報や深刻な相談をする決心をして電話をかけたのに、受話器からまず流れるのが電話料金の音声案内では、通報・相談者の決意も鈍ります。各方面から批判が多かったところから、厚生労働省は「189」の通話料を来年度から無料にする方針を固めたそうです。

 笑顔が優しく頑張り屋だったという女児の命が奪われたこの事件に関して、県は同児相や野田市の対応を検証する第三者委員会を設置することを決めました。あらゆる方面から細密な検証を行い、このような痛ましい事件の再発防止を図っていただきたいと思います。

 

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